かくりよ書房夜明け分館

服飾、文芸ほか雑記

そだちすぎだよ。

 自宅には繁栄を極めている植物が二種ありひとつがホヤ・ケリイ。ハートサボテンと呼んだ方が通りがいい気がする。あの植木鉢に肉厚のハート形の葉が突き刺さるように生えているやつだ。100円ショップで1つだけ買ってきてかわいいかわいいと愛でていたはずが、いつのまにかあの葉っぱの根元から細い枝が生え、さらにそれが分かれた先に無数のハートサボテンが噴き出して結構なスピードで増えていった。今うちにはおそらくやつの鉢が15ほどある。

 基本的にハートサボテンは居間の出窓で繁茂しており、私が自室に持ち込むとそいつらは結構情け容赦なく枯れる。世話の雑さは上も下もそんなに変わらない気がするのだけれど、たぶん日照時間とか気温とか微妙な差があるんだろうなあと思う。世話をしやすいと言われる多肉ですら枯らす私に育てられる植物なんてあるんだろうか、と思っていた。

 あった。奴の名前はコダカラベンケイソウという。うちで繁栄を極めている種のその2である。

 コダカラベンケイソウはアロエみたいに肉厚な薄緑の葉をもった植物だ。葉は幾重かに広がって付き、葉のふちからやっぱり肉厚の小さな四つ葉(よく見ると細くて白い根が出ている)が無数に噴き出ては地面に落ち、爆速で増えていく。花が咲いているのは見たことがないので、おそらくこうやってクローンみたいに増えていく種類なんだろうと思う。
 すっかり引きこもっていた昨年夏、私はトイレの前で放置されていた謎の鉢(おそらく前に生やしていた何かが枯れたらしい、かさかさの茎とぱさぱさの土だけがギチギチに詰まった割合大きなものだ)を回収し、ハートサボテン同様居間の出窓で繁栄を極めに極めた結果親元の鉢から零れ落ちてしまったベンケイソウの芽を3つか4つ、無造作に拾って鉢に放り込み、日光の直撃を受けて灼熱地獄と化す自室の出窓に置いた。思い出したときに水をやるだけであまり構いもしなかった結果、4つあった芽のうち1つがギリギリ根付いてぐんぐん大きくなり、私が正気を取り戻した頃には小指の爪の先ほどだった奴は大人の手のひら大の大きさにまで育ってわさわさと葉をつけていた。私の雑な世話と過酷な日射条件に耐えうる個体なので頑丈だったのに間違いはないのだけれど、あまりの大きさに若干引いている。

 鉢は親のこいつで手一杯なのだ。子供がここに増えたらどんなことになるか分からない。しばらくは芽が出る気配がなくてほっとしていたのだけれど、母が緑色のチューブ型の栄養剤を土に刺していった翌日、まるであふれるように葉の縁から四つ葉が噴き出してきた。

 スペースがどこにもないため、緩慢な間引き、という殺伐とした後ろ暗いことばを胸に摘み取った芽を水も土も何もない皿の上に放置している。放置しているのにゆっくりと根が伸びている。

 

 ちょっと怖い。

 

 どうしよう。