かくりよ書房夜明け分館

服飾、文芸ほか雑記

あなたの宇宙はどこから?

「宇宙」を知らなかった小学生と話す機会があった。その子は私の「宇宙、わかる? 空の上の方……」というめちゃめちゃふわふわで雑な説明に「天国ですか?」という問いを返したのだけれど、そうか、ビフォア宇宙は天国か、とも思い、神話の世界がなまなましくあった頃の人の考えというものはこうではなかったかと考え、それはそれとして、自分が生きている世界についてはこのあたりで知ったほうがいいんだろうな……とも思ったので、大きな写真の載った本をいっしょに開いた。
 これが地球。この辺りに私たちは住んでいる。海があり、ほかの陸地があり、そして、空があり、空には外がある。外が宇宙。夜光る星はここにある。月も太陽もここにある。途方もないことだ。

 そういえば、私の宇宙はどこからだったっけ、と思い返して辿れる限りの記憶をたどると、たぶんここからだろうという作品が見つかった。

映画ドラえもん のび太の宇宙漂流記

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 多分小学低学年かそこらの夏休みに、放映されたものをビデオテープに録画して繰り返し見ていたと思う。
 私たちが住んでいる場所は宇宙という空間に浮かんでいる地球という星である。地球にはものを地面へ引き付ける重力がある。宇宙には重力がない。宇宙ではものが宙に浮かび、水が球になる。宇宙船を使うと宇宙に出ることができる。光の速さで移動しても、辿り着くのに何年もかかる遠い場所というものが存在する。何もかもを吸い込むブラックホールという恐ろしいものがある。そのあたりを、ドラえもんたちはごく自然に教えてくれた。(トラウマ映画という評判が高いみたいなんだけど、そんなに怖いシーンあったっけな……のび太の部屋を無重力にする場面しか浮かばない。また観てみようと思います)
 タイムワープ、それに伴って発生するパラドックス、発明、科学、未来、過去という概念、空地、店番、0点のテスト、先生にあだ名をつけること、無人島、冒険、環境問題、世界の名作文学、外国の存在。そのほか、いろいろなものを知るはじめについてもかなりドラえもんに依存していたと思うんだけど、ドラえもんからざらざらと知識を頭に注いでもらえる環境にいたことがラッキーだったんだろう。

 宇宙を知らなかった子や、そのようなひとたちが、ドラえもんか、ドラえもんに匹敵する何かに出会えればいいなと思う。出会う手伝いができればいいなと思う。手探りでやり方を探している。私がドラえもんならひみつ道具で一発解決だったのかな、いや、そんなことはなかったな、と思いながら。

 あなたの宇宙の始まりはなんでしたか。