かくりよ書房夜明け分館

服飾、文芸ほか雑記

なりたい顔面は未だにちょっとよくわからないけれども

 昨年12月からのんびりと、服装やメイクに手を入れ続けています。

 今日は化粧の話です。

 何を塗るとどう顔面が変化するのかわからず、最低限の化粧品を『メイク道具同梱の取り扱い説明』を基に漫然と塗っていたのが、化粧を始めた大学入学直後~昨年の12月まででした。12月にZARA事変があり(本当はZARAだけでなくORiental TRafficとETUDE HOUSEにもお世話になりました。その節はありがとうございました)、その際買い換えた服に合わせて友人がノリノリで顔面をいじってくれました。
 それ以前に人にメイクをしてもらったのは成人式の振袖写真の時。美容師さんが頑張ってくださったのですが、つけまつげとアイラインのおかげかめちゃくちゃけばけばしい顔になってしまい、着物も相まって完全に『ザギンの女』と化した苦い思い出があります。振袖の写真ってもっとこう……若々しさとか初々しさとか出すもんじゃないの……? 知らんけど……。
 自分の普段がナチュラルメイク(というか塗ってんだか塗ってないんだかわかんない申し訳程度の化粧)だったのもあり、「私の顔は手数を掛けると怖くなるんだな……」と思って、肌を整えて血色を足す、から先の工程を敬遠し続けてきていました。
 ところが、友人が手持ちのメイク道具やら店頭の試供品やらで作ってくれた顔は、確かにそれまでに比べると濃いものの『ケバい』『怖い』という感じではまったくなく、
「厚く塗ったり手数を増やしたからって顔が怖くなるわけじゃないんだな!?」
という衝撃があったのです。

 そこから放浪の旅が始まりました。

 口紅の色をビビッドにしてみたり、ベージュしか持ってなかったアイシャドウに色物を足したり、コンシーラーやアイブロウをようやく手に入れたり、ハイライトやシェーディングを勉強してみたり。うまく使えないものは色があってない可能性もあるので違う型番を試したり。

 メイク道具に塗られるんじゃなくて、したいメイクを自分でコントロールできるようになってきたごく最近です。最初は全部出力を0か100にしかできなかったんですが、「ここを入れてここを抜く」ができるようになりつつあります。面接があった時に思った通りの顔で人前に出られて嬉しかったり、友人の結婚式に納得のいく顔で出られたりするのはとてもよい。

 メイクを勉強してて、メイクが上手くなるだけではない思わぬ副産物のようなものがあったので、以下につづけます。

 まず、失敗耐性が付きました。一発で正解を出さないと、という謎の縛りで人生を生きてきた人間だったんですが、化粧品界隈を散歩しているとどんなに気を付けても数歩歩いてすっころぶ、みたいなことが多いのでいちいち気にしてられなくなった。売り場で手の甲に塗って試しても限界はある。

 あと、人間の顔をよく見るようになりました。
 自分だとよく分からないのですが、割と眼力が強いタイプの顔をしているらしく、ガンを飛ばしているだの目つきが悪いだの虫の居所が悪い人の虎の尾をまったく無自覚に踏むことが多々あって、気づけば人間の顔を直視するのがかなり苦手になっていました。醜形恐怖っぽい思い込みも苦手に拍車をかけ、『人間の顔』に対する耐性とリテラシーはおそらく同世代の最低レベル。「なりたい顔は?」とか「好きな顔の芸能人は?」と訊かれても「……? 顔に違いがあるの……?」の状態です。人の顔と名前を一致させるのもめちゃくちゃ苦手。初対面の場で仲良くなっても、服や髪形を変えられると次に会ったらもう分からない、みたいなこともありました。

 メイクに慣れ始めると、まず「人前に出せる顔じゃないから視界に顔が入らないように俯き続ける」がなくなり、目の前の人の顔を(なんならニコニコしながら)見るのが平気になりました。
 それに昨今はYouTubeなんて便利なものがあり、投稿者さんが自他の顔をメイクする動画がゴロゴロしている。最初はそれですら「人の顔が……」という感じでちょっと辛かったのですが、トークが好きな投稿者さんが見つかってその動画を浴びるように見始めてから、どんどん『人間の顔』耐性がついていきました。『人間の顔』、私の中だと神か幽霊みたいなポジションだったのが、メイク動画の中だと『色と凹凸の集まり』というキャンバスみたいな扱いなので、そういう視点で見るとあんなに怖かったのが『所詮いきものの部分』『色を塗る前/塗ったあとの何か』になってしまう。不思議な感じがします。
 そして美しい顔面を作る過程を動画で観始めると、今度は気になるのが女優さんの顔。今までは台詞と雰囲気でだけ認識していたのに、今度は『好みのメイクの人』『自分の顔の造形に近い人』『キャラクターとメイクの関係』を気にしながらドラマや映画を見るようになり、画面の情報量が爆増しました。最近は家族が見ているリーガルVの女優さんの顔をひたすら追いかけている。そして、女優さんの顔を見ていると「過剰な役は過剰に、そうでない人は抜くところを抜いたメイクをしている」ことがわかり、全部濃いメイクを見直すきっかけができました。字にすると当たり前のことですが、人間の顔が全部同じに怖く見えていた頃を考えると大進歩である。 

 勉強、してみるものですね。

 

 まあ、最近は新しい化粧品や服よりショッピングに耐え得る体力がほしい。パーソナルカラーとやら、盛大に迷子なので似合う色や形は試さないと分からないんだけど、人でごった返すショッピングモールを歩いてると(何せ他に娯楽のない田舎なのでみんなそこに来てしまうのです)それだけで体力が吸われて何もできないままおうちに帰ることがたびたびある。何をしに来ているのだお前は。

 リングフィットアドベンチャー買うか……? その辺走ってもいいんですけど猪出そうで怖くて……さむいし……(言い訳が多い……)。